石灰岩を行く・香春岳 三ノ岳 [ 504m ] ニノ岳 [ 468・2m ]
空地〜三ノ岳山頂 (25分) [ この区間の地図 ]
林の中に踏み込むと、岩壁の手前にわずかばかりの平らな草地がある。
平地はわずかでも、岩ばかりの斜面には、山頂以外ここだけしかない。
一息つき、岩壁の右手からまた岩場を登って行く。
岩には、登山者の踏み跡はないが、行く手は赤い矢印に任せればいい。
それにしても岩が多い。隙間なく斜面を覆い土の感触はない。
足場を確かめ一歩一歩進んでいく。
途中、何の花かカメラを向けてしまった。
岩場に咲く花は、焦るような気持ちを和ませてくれる。
さらに、矢印を見て岩に手を掛け登って行く。
傾斜も中々大きい。
前を行くのは27歳の青年、実は我が一人息子で京都のロームに勤め休暇中に付いてきた。
若いなりに進むのは早い。早く嫁をと思うのは妻だけではない。
妻の仕事を継がせたい、と思うのも妻ばかりではない。
ただ、上場企業に対し、社員数人の設備業に、はかなさを感じる昨今である。
後に妻に聞いたが、既に消防設備士の甲4の資格を取得し、同甲1を勉強中だという。
何故息子は、先に親父に言わないのか、しかし、悪い話ではなかった。
さて、岩ばかりの急登に、つい脇道にそれたが、相変わらず岩道は続く。
左手に目を向けると、坊主の頭を置いたような可愛げのある牛斬山に一息ついてしまう。
なぜ、きわどい山名が付けられたのかわからない。
そして、右手へまた岩場を行く。
大きな傾斜の斜面には、石灰岩が幾重にも折り重なり、展望を楽しむ余裕を奪い取ってしまう。
ただ、ひたすら足場を追うばかりである。
しかし、岩は安定し手がかりもあり、危険にさらされることはない。
そして、ロープを手に岩場をよじ登ると一瞬草つきの道にでる。
しかし、草道は消えすぐ岩場になり、ロープに助けられ岩場を抜けると、また土道になる。
土の優しい感触を感じながら10数メートルも行くとまた岩場になる。
岩々はすべて石灰岩で、サンゴや貝類が堆積し造られたものであるが、海中のものがプレートの移動によって、香春町に来るとは地球エネルギーの巨大さに驚いてしまう。
ただ、石灰岩であるが故、セメントの材料として一ノ岳は削られ、将来この岩々もセメントの材料となる宿命にあるのか、気にならないではない。
山頂はもう近い、この期待がその不安を薄めてくれる。
行く手に矢印を見て、ゴロゴロと積み重なる岩々は、しっかり手を当て、一歩一歩、歩を上げていくしかない。
この辺りは、岩は多いが傾斜は小さい。
左手に赤いテープを見ると、正面が開けてくる。
さらに大きな岩を乗り越えていくと、天井は開け見通しが利いてくる。
そして、
切り立つ岩
の左手から用心して岩場を行く。
岩上に立ち、右手へ振り返ると牛斬山がずいぶん沈んで見える。
その分、背後の福智山の稜線が浮かび上がってくる。
この辺りは、細長い山頂の位置にあり岩を伝っていくが、山頂の岩は何故か直立した岩が多い。
それだけに、一歩一歩がてこずってしまう。
そして足元に目印の赤いピンを見ると、
最後の関門の岩
が見えてくる。
その岩に立って、さて降りるのに一苦労してしまう。
そのまま降りるには高すぎるし、飛び降りるには足場が悪すぎる。
その岩を越え振り返ってみると、写真左手に窪みがあり、岩上に腰を降ろしその窪みに右足をついて飛んでしまったが、足場が傾斜しておりこの方法も進めづらい。
しかし、大騒ぎするほどではない。
岩を越えると、すぐ先に山頂の紅白のポールが見えてくる。
振り返ると、積み重なる岩々に「よく歩いてきたもんだ」と感心してしまう。
そして、最後の岩を今一度振り返ると「岩場」と朱書きされている。
数メートル先は山頂広場になる。
山頂は、この時期草に覆われ、広くはないがゆっくりくつろぐスペースはある。
山頂からは南に二ノ岳、その左手に削られた
一ノ岳の一部
が傷口を見せるように哀れな姿を見せている。
北側に竜ヶ鼻、その背後に貫山が遠望できる。
さらに東側には、障子ヶ岳も一望できる。